七月と八月の小さな話

 

 

■陣内さんちでの一幕■ >>宴もたけなわ、離脱組

「なぁ佳主馬、健二くん知らねぇ?」
「もう、知ってるわけないでしょ。なんでさっきからみんな僕に聞くわけ」
「はぁ? そりゃおまえがくっついてるからじゃねぇの。シシ。でも健二くんもお前にモテたってなぁ。夏希のがなぁ」
「酔っぱらいうざい。すごーくうざい」
「シシシッ」
「まぁいいや。侘助おじさんお兄さんどこにいるのか知ってる?」
「いやだからお前それ俺が聞いたんだっての」




■陣内さんちでの一幕■ >>差し込む夏日を避けるよう座って昼ドラを見ながら。女性陣は台所。

「痴情のもつれで殺人って、なんだかなぁ」
「うん?」
「気持ちがいくつもわかれるからダメなんだと思うんですよね」
「シシ、数学で求められる答えがただ一つのものであるかのように?」
「そしたら解りやすいじゃないですか」
「……あのさぁ、答えが一つだけっていってもさプロセスっていくつもあるよね。ついでに真実は一つでも事実は何通りもあるよね」
「………」
「指差さないで納得しないであんたたちバカなの」
「佳主馬くんなんか名探偵に真っ向からケンカ売ったくせに」
「バカって。俺にバカって」
「は?」
「いや、あの、うん、す、数学に喩えたから」
「じゃあ何だとぴったりなのかなー? 言ってみてお兄さん」
「聖美ちゃーん。お宅の息子さんが幼稚園の先生みたいになってんだけどこれ妹ちゃんの影響ー?」





■陣内さんちでの一幕■ >>昼ドラ見たあとの夕日が差し込む大広間で

「うっわなにこれなんで紙散らばってんの」
「健二にいが」
「散らかしたー」
「俺ら片付けてんのー」
「なー」
「……それでどうしてあっちで健二くんが正座で佳主馬が仁王立ちしてんのかわかんねぇ」
「佳主馬にいがいくら話しかけても健二にい無視してたから」
「あ、あー、あー……」





■陣内さんちでの一幕■ >>大広間を後にして夕暮れが望める納戸で

「そもそもどうしてそんなに数学ばっかりなの?」
「そりゃ、三つ子の魂的なあれじゃね?」
「……え、なに、三つ子? ……じゃあ、うん、仕方ないのか」
「え、佳主馬くんそれで納得できるの?」
「だってお兄さん死ぬまで離れなさそうだしそうなると」
「ははは否定できないや」
「100まで生きろよ健二くん。そっからならわかんねぇかもよ佳主馬」
「いや侘助さんも長生きしてくださいよ」
「おじさんは早死にしそう」
「おまえは俺に対して失礼だ。まぁ、心配すんな。ばあちゃんみたいに大往生で逝くぞ家族に囲まれてな」
「……かぞく?」
「その目を止めなさい。俺にだって家族くらい作れます。だからそんな目で見るなってんだろ」





■陣内さんちでの一幕■ >>でっかいパソコンが鎮座する今は亡き栄の書斎で

「そういえば栄ばあちゃんからオズの操作教えてくれって言われたことあるんだけどさ」
「ふぅん。おばあちゃんも先輩みたくあんまりやってなさそうなのに」
「うん。だから消したくないメールがあるからどうにかしたいって言われて」
「うわーメールしているおばあちゃんが想像できない」
「返事は電話のほうが多かったよ。まぁそれで、栄ばあちゃんのフォルダ見てみたわけ。送信者不明のバースデーメールがいっぱいあって。しかも曲つきで。ハッピバースデーってアバターが歌うわけ」
「あれ侘助さん顔色悪いですけどどうしたんですか?」
「ほっときなよ。大丈夫だから。ね」
「お、おう」
「保存しといたメール、じつは今もオズのサーバーに残ってる」
「ぶっ」
「ちょっ本当になんでもないんですか侘助さん顔が真っ赤ですけど!」
「……話しといてなんだけど、お兄さんって割とえぐってくよね」
「佳主馬が言うな。ウサギの耳がでっかいのは情報掴むのが早いからってかくそ」
「無理して反応しなくていいよ、放蕩息子のおじさん」
「こんのやろ」
「あっ、もしかしてメールって」
「いや言わなくていい言わなくて。健二くん頼む」



■陣内さんちでの一幕■ >>おじさん と おじさん三兄弟

「そういやアメリカに嫁さん候補とかいないのか」
「シシシ、結婚してるって思わねぇの?」
「いやそうだったら連れてくるだろ、嫁」
「奥さんっていいぞー」
「子どももな!」
「お前んとこは長男……」
「言うな。言わないでくれ。嫁さんのマジギレ警報がやっと解除されたんだから。ちょーこえーんだぞうちの嫁さん」
「………で、侘助、嫁は?」
「おまえらはまずその残念なものをみる目つきをやめろ」
「だって知ってるもん、侘助がマザコンだって」
「なー」





■陣内さんちでの一幕■ >>四年後in納戸

「そういえば性別転換の歴史映画が今度公開されるみたい。前評判だと設定が斬新って言われてる」
「見たいの?」
「んー、ぼくはあんまり。どうもヒューマン系みたいだから寝ちゃうかもしれないんだよねぇ」
「アクション好きだよね健二さんは」
「うん、まあね。あんな動きできないから見てて楽しいし。佳主馬くんはそうでもないかもしれないけど。まぁ、もしさ、ぼくらが女の子だったりしたらどうする?」
「その映画みたく?」
「そう」
「困るんじゃない」
「ははは、だよねー」
「健二さんがだよ」
「え?」
「当然、僕は男のまんまだよ」
「え?」



 

 

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